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皆さんこんにちは、ダイナム高崎箕郷店の永井です。

【従業員永井の百物語】のコーナーです。

夏にヒヤッとするお話をご紹介してまいりますので、ぜひお楽しみ頂ければと思います

 

今回紹介する怖い話は

【神谷のおばさん】‼

この怖い話を紹介していきます。

 

 

 

 

<内容>

俺が中学の時、『神谷のおばさん』という有名人がいた。

同級生神谷君のお母さんなので『神谷のおばさん』なのだが、近所の人はもちろん、同じ中学の奴もほとんど神谷のおばさんを知ってるくらい有名だった。

見た目は普通のおばさんなのだが、とにかく話を聞くのも話すのも上手い人で、地元のヤンキーすら「神谷のおばさんに怒られちゃしょうがない」って悪さを止めるくらい。

俺たちのくだらない悩みや、相談も真剣に聞いてくれたし、本気で怒ったり励ましてくれる人だった。

で、神谷のおばさんと言えば怖い話って思い出すくらいに怪談も得意だった。内容とかはよくある話なんだが、なにより話し方がうまかった。

そんな神谷のおばさんに関する話。

 

俺が中学2年生の秋、クラスに転入生が来たんだ。名前は秋山。

田舎の学校だから転入生なんて珍しくて結構注目されてた気がする。

背が高くて、顔立ちも整ってて、いかにも女子受けのよさそうな奴だなと思った。

 

最初の頃はみんな秋山の周りに行ってあれこれ世話をしていたんだけど、日が経つにつれて秋山は避けられるようになっていった。

どうやら犬に石をぶつけたり、猫を蹴り飛ばしていたそうだ。

もちろん担任の耳にも入り注意をされたが、そうすると今度は母親が乗り込んできて大騒ぎになったそうだ。

噂では、前の学校でも問題を起こして母親と学校とで揉め、それで両親が離婚して母方の実家に戻ってきたそうだ。うちの母親が地元出身で秋山母のこともよく知ってたらしくこんなこともわかったそうだ。

ちなみに担任は熱血漢で秋山母と全面的に争っていた。

とにかく秋山は怖かった。

ヤンキーや不良とは違った得体が知れないものへの怖さ。皆本気で怖がってた。

 

そんなある日、俺が神谷の家に遊びに行くとちょうど神谷とおばさんが買い物に行くところだった。近所のスーパーに行くんだが米やら重いものを買うから付き合うんだとか。なら俺も付き合うよと、三人でスーパーに行くと、買い物中に秋山が少し離れているところに立っていることに気づいた。

秋山の家はここから遠く、ちょっと買い物にしては不自然だった。

俺は神谷に教えると、神谷もなんでいるのかと不思議そうにしてた。

そんな話をしていると神谷のおばさんもやってきて、立っている秋山のことを聞いてきたので答えると、

 

「アレは駄目、近寄らないでね。それしか方法が無いわ」

 

それだけ言っておばさんは買い物に戻っていった。

 

 

俺はショックを受けた。今までどんな不良も決して見捨てなかったおばさんがこんなこと言うとは思わなかったからだ。神谷もすごく驚いていた。

 

それからしばらくして秋山は学校に来なくなった。

でも誰も心配しなかったし、むしろ安堵すらしていた。

何回か秋山母がいじめがあったんじゃないかと乗り込んできて、俺の家にもやってきてあることないこと言って俺の両親もキレていた。

俺は何となく悲しかった。ああ、この人も狂っているんだなって。

 

 

 

結局、秋山は学校に戻らずずっと入院しているそうだ。

秋山母も別のところに入院したそうだ。祖父母は我関せずで、ずっと入院させておけって感じだったそうだ。

 

 

その後、機会があったので神谷のおばさんに秋山について聞いてみた。

おばさんは少し考えたあと、「人間ではない」と答えた。

「一目見てわかったよ、もう人間じゃなかった。

元々はたぶん普通の子だったんだと思う。

小さい頃から少しずつ食べられて本物の秋山君はもういなくなっちゃってた。

今は秋山君の皮の中に、ドロドロとした念が詰まって人の形になってるだけ。」

俺と神谷は驚愕した。今まで怪談はよくしてくれてたけど、こんな霊能力者みたいなことを言ったのは初めてだからだ。

なんでそんなことになっちゃったのか聞いてみると、神谷のおばさんはこう答えた。

「『親の因果が子に報い』ってことなのかね。あの家のお祖父さんが何人も人を死なせてる。

直接じゃないけどあのお祖父さんのせいで死んだ人がたくさんいる。

秋山君のお母さんがおかしいのはそのせい。

でも、それじゃ収まらなかったから秋山君にも行っちゃって、死んだ人の恨みや呪いが禍々しいものを呼んで秋山君は食べられちゃった。」

「それじゃ秋山は悪くないじゃないか!」神谷がそういうと、

「因果なんてそういうもんよ。個人じゃなくて【血】を祟るのよ。親しい人とかね。

あんたらも心しておきなさいね。そういうのには人間の理屈とか通用しないのよ。」

というとおばさんは台所へ消えてった。

俺と神谷は自分が悪いわけじゃないのにこんな目に合うのかと落ち込んだ。

 

 

後に分かったことだが、秋山の祖父は昔強欲な金貸しだったらしく、相当ひどいことをしていたそうだ。

そんな秋山の祖父も晩年は病で苦しんだそうだ。

秋山や秋山母は行方知れずだ。

 

----そして俺は、ご先祖様に感謝し、墓参りや法事は真剣にしている。

ご先祖様ありがとう、皆のおかげで俺は幸せに暮らしてます、と。

 

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

”従業員永井の百物語”は7月~9月の夏限定更新となります。

次回、第四夜でお会いしましょう。